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第4回 「妻と娘への遺書」(タダシさん)

こんにちは、野口嘉則です。

今回紹介するお手紙は、「遺書」です。
奥さまと娘さんに宛ててかかれたものです。

なぜ遺書なのか?
それはぜひ読んでみてください。

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久美子と美穂へ


今から遺書を書こうと思う。

遺書といっても、自殺なんかを考えているわけじゃない。
余命数ヵ月という病気になったわけでもない。
だから心配しないで。


悔いのない生き方をしようと思ったんだ。
今を精一杯生きたいと。

そのために遺書を書いてみようと思う。


あるインターネットのサイトを見ていて、こんな問いかけが
あった。
「あなたの人生が残り3日間しかなかったら何をしますか?」


真剣に考えてみた。
残り3日間しかなかったら何をしたいか?
3日間を悔いなく過ごすにはどうしたらいいか?

そして、一番したいことが見つかった。


それは、久美子と美穂にメッセージを伝えること。

君達と出会ったことが、僕にとってどれほど幸せなことだった
か。
君達からどれほどたくさんの喜びと生きがいをもらったか。
僕が君達にどんなに感謝しているか。

そのことを心の底から伝えたい。
素直な言葉で伝えたい。


その大切なメッセージを、僕は今までの人生で十分には伝えてこ
なかったと思う。
「そんなことは言わなくてもわかっているだろう」と言わんばか
りに、出し惜しみしてきたと思う。


だから、もし万一のことがあって、そのメッセージを伝えること
なく、世を去ることになったとしたら、僕はそのことを悔やんで
も悔やみきれないだろう。


だから、生きているうちに、僕の気持ちを手紙にしたためること
にしたんだ。
これは、僕の人生で一番重要なことだ。


ただ、あとで読んでもらうものだと思うと、何か照れくさくて、
素直に書けない気がする。

だから、遺書という形にする。
自分に万一のことがあった時に読んでもらう遺書だと思えば、僕
の気持ちを素直に書けそうなんだ。


これから、僕の本当の気持ちを書くね。
そしていつの日か、僕がこの世を去ったとしても、この気持ちは
永遠に消えることがない。




久美子へ

今日まで 15年、僕と一緒にいてくれてありがとう。
人生のパートナーでいてくれてありがとう。

いろいろあったよね。
でも、ずっと僕のそばにいつづけてくれた。

言葉では表せないくらい感謝している。
これが僕の本心だ。


なのにいつも、君に小言ばかり言ってしまう。

「もっとまめに洗濯してくれ」とか、
「お弁当のおかずの唐揚げは飽きた」とか、
「子どもたちにちゃんと宿題をさせてるか」とか。


もしも人生が3日間しか残されていなかったら、君に伝えたいの
は感謝の言葉ばかりなのに、実際は小言ばかり言ってきた。

君に面と向かって感謝の気持ちを伝えるのは、1年に1回。
君の誕生日の時くらいだ。


これじゃぁ、僕の本心は伝わるわけないよね。
僕は間違っていた。
僕がどれだけ感謝しているか、それを君に伝える努力をまったく
してこなかった。


この手紙に書くだけでなく、今日からは毎日、君に「ありがとう」
って言うことにする。

照れくさいなんて言ってる場合じゃない。
これは僕の人生で一番重要なことだ。

これから、今までの穴埋めをするからね。


そして、君に謝りたいことも山ほどある。


先々週のことだった。
仕事で遅くなるからと、あるテレビ番組の録画を頼んだよね。

君は録画するのをうっかり忘れた。
楽しみにしていた番組だったから、僕は怒ってしまった。
「ごめん」と謝る君に対して、僕は「役立たず」なんて言って
しまった。

君のしょげた表情を思い出すと、胸が痛くなる。
あの時、僕はすぐに謝るべきだった。

あんなテレビ番組なんかより、君の気持ちのほうが大切なのに。
テレビ番組の楽しさよりも、君の笑顔を見る幸せのほうが大切
なのに。

本当にごめん。


他にも謝りたいことはたくさんある。


美穂が生まれて間もないころのこと。
美穂は夜も2~3時間おきに、おっぱいを求めて泣いたよね。

あのころ僕は、大きなプロジェクトを任されていて疲れていた。
美穂が泣くたびに目を覚ました僕は、君に向かって言った。
「早く静かにさせてくれ。ゆっくり寝かしてくれよ」

君としては辛かったと思う。
美穂がおっぱいを求めて泣くのは当然のことだし、それは止めよ
うもない。
それを責められたんだから、やりきれなかったよね。

君こそ、美穂が泣く度に起きておっぱいをやっていたのだから、
本当に大変だったと思う。
しかも、初めての子どもで不安もいっぱい抱えていただろう。

そんな時こそ、心の支えになってあげるのがパートナーというも
のだ。
なのに僕は、君の心の支えになるどころか、君にストレスを与え
ていた。

本当にごめんね。

できるなら、あの頃に戻ってやり直したい。
そうすれば、少しは君の気持ちを楽にしてあげられると思う。


こんなふうに、謝りたいことがたくさんある。
思い出すと胸が痛くなるくらい悔やまれることもある。

いい夫でなくてごめんね。


残念ながら過去はやり直せないから、これから穴埋めをしていこ
うと思う。
それが僕の感謝の気持ちの表現だ。


久美子、僕と出会ってくれてありがとう。
幸せな人生をありがとう。


【追伸】
いつかあの世に行った時、「人生で食べたものの中で一番おいしか
ったものは何か?」と聞かれたら、間違いなくこう答えるよ。
「妻が作ってくれたお弁当です」と。




美穂へ

君がお父さんとお母さんのところに生まれてきて14年になるね。
生まれてきてくれて本当にありがとう。

大きくなったよね。
今や君も中学2年生だ。

ここまで育ってくれて本当にうれしいよ。


君が成長していく姿が、お父さんにとって最高の喜びだ。
君のおかげで、お父さんは親としての喜びを知ることができた。

これは何ものにも替えがたい喜びなんだ。
君もいつか親になったときに知るだろう。


クリスマスや君の誕生日がやってくるたびに、いかにして君を喜ば
そうかと、お母さんと一緒に考えたなあ。
それは、お父さんとお母さんにとって、何よりも楽しみなこと。

君はお父さんとお母さんに、たくさんの喜びと楽しみと感動をもた
らしてくれた。
君はまさに天から授かった宝だ。


君が幼稚園に通っていたころ、父の日にくれたプレゼントを覚えて
いるかな?
君が描いてくれたお父さんの顔の絵だ。

お父さんはそれを会社に持っていって、引き出しに入れていたんだ。
仕事で辛いことがあっても、その絵を見ると元気が出てきた。

君の存在が、お父さんに元気と勇気とやる気を与えてくれた。
お父さんを人間として成長させてくれた。


お父さんは君からたくさんのものをもらっているんだ。
だからこれからは、君に恩返ししていきたいと思っている。


君に謝りたいとこもある。

1学期の君の成績表を見て、お父さんは「塾に行きなさい」って
言ったよね。
「今ちゃんと勉強しておかないと将来困るぞ」とも言った。

君は「もっと友だちと遊びたいから塾には行かない」と言った。
そんな君にお父さんはこう言った。
「クラブ活動をするわけでもない。勉強も頑張るわけでもない。
毎日だらだらと友達と遊んでばかりじゃないか。お父さんは親と
して恥ずかしいぞ」

君はすねた態度を取ったけど、本当はお父さんの言葉に傷ついた
んだろう。
美穂、ごめんね。
心にもないことを言ってしまった。

親として恥ずかしいなんて、とんでもない。
本当は君の親であることを誇りに思っている。

君のやさしさ、純粋さ、そして自分に正直なところを尊敬してる
んだ。


なのに、君の将来を心配するあまり、心にもないことを言ってし
まった。
どうかゆるしてほしい。


今回、この手紙を書くにあたって、あらためて君の将来について
考えてみた。
そして一つの結論にたどりついた。

美穂、君なら大丈夫だ。
どんなプロセスを経ようと、どんな道を選ぼうと、君はきっと幸せ
な人生を送るだろう。

君はしっかりしている。
そして、人として素敵な魅力をもっている。

だから大丈夫だ。

安心して、今したいことをしたらいい。
今を幸せに生きたらいい。


お父さんは、君が君であることをいつまでも応援するから。




神さまへ

久美子と美穂に出会わせていただきありがとうございます。

素敵な家族と幸せな人生をありがとうございます。

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タダシさんは、この遺書を書かれた後で、結局すぐに奥さまと
娘さんに渡されたそうです。

奥さまも娘さんも涙を流され、家族3人で抱き合って泣いたそ
うです。

「皆さんも遺書を書いてみてください。絶対にオススメです!」
とのことでした。

タダシさん、素敵な遺書を公開してくださりありがとうございま
した。


<追記>
タダシさんは、私の知人でもあります。

私のブログを読んでくれて、それをきっかけにこの遺書を
書いたそうです。

その後、タダシさんとは何度かお会いして、私が書いてい
る本のストーリーについて、いくつかのヒントもいただきま
した。

私の本は、私自身のこれまでの体験の他、私の友人や
知人の体験やエピソードも題材にしてストーリーを考えて
いくのですが、タダシさんもその題材とヒントをこころよく
提供してくれました。

あらためて感謝します。
タダシさん、ありがとう!

                              (野口)

第4回 「妻と娘への遺書」(タダシさん) へのコメント(全12件を古い順に掲載)

コメントNo.1|2007年08月17日 00:04

純粋に自分の気持ちに素直になって遺書を書かれたその文章に感動しました。
自分にとって一番重要なこと。目先の余計なことが沢山あって、それに目を奪われてつかめていないのかも知れません。

私はまだ一人身ですが、自分の気持ちに素直に生きてゆきたいと思いました。

ありがとうございました。

コメントNo.2|2007年08月17日 00:48

わたしも奥さんや子どもたちに

そんな風に思いを抱き、そんな風に伝えられる人になりたいと思いました。

「人生が残り3日しか無かったら、あなたは何をしますか?」

本当に現実のこととして、真剣に考えられたのですね。

そしてすぐに行動に移されたのですね。

素直さと、実行力に心を打たれました。

わたしにはまだ、そのような家族の深い絆を実感できてないと思いますが、

結婚し、子どもができたら、神様に感謝したくなるほどの

こころの絆のあたたかさを持てたらいいなと思いました。

人のつながりって、すごくいいですね。

素敵な遺書を読ませていただいてありがとうございました。

コメントNo.3|2007年08月17日 13:58

何度も、鼻の奥がツーとしてきて・・・涙になりました。
心に響くお便り。
感動をありがとうございます。

コメントNo.4|2007年08月17日 20:34

読んでて、涙が出てきました。

奥様や子供に、素直な気持ちを表現できるなんて
素敵なことですね。

私も、日々子育てをする中で、
ついつい怒って、後で反省するということが
山のようにあります。
でも、なかなか素直に謝れない。。。

この遺書を読んで、
私も、主人や子供達に素直な気持ちを
表現したいと思いました。

これからも、ご家族を大切になさってください。

素敵な遺書を読ませて頂き、
ありがとうございました。

コメントNo.5|2007年08月18日 20:44

折しも、娘の通っているクラブで一緒に練習していた子のお母さんが、昨日突然亡くなりました。

その日は家族でプールに遊びに行き、帰ってきて、
「今日は暑いから、クーラーの効いた部屋でみんなで一緒に寝よう」と彼女が提案して川の字になって休んだそうです。
朝、仕事に行くためにかけた目覚ましは彼女が止めたようなのです。
でも、しばらくして「お父さん、お母さんが息していないよ!」
と子供さんが気づいた時にはもう亡くなっていたそうです。

彼女はまだ30代。小5の女の子、小4、そして2歳の男の子がいます。
たくさんこの世に思いを残したまま逝かなければならなくて、そして何より愛していた人達にもう何も伝えるすべがない事が本当に無念だと思います。

彼女は私たちに、明日が確かに来ると保証されている人は誰もいない、だからその日その日を精一杯生きて、愛している人達に素直に思いを伝えて行かなきゃと教えてくれました。

今までいろいろ助けてくれてありがとう。
そして、心からご冥福をお祈りいたします。

コメントNo.6|2007年08月21日 16:58

素敵なアイデアですね、遺言書。私も(一応)二児の父親ですが、子育ては手探り状態の毎日。それでも、子供は日ごとに大きくなっていくんですよね。たまに、「本当にこんな父親で大丈夫かな」なんて自分で小さく反省したりもして......
でも、妻をはじめ子供たちに会えた事は、タダシさんと同じように感謝するよう心がけています。特に、妻にはなるべく付き合った当初の気持ちを忘れない様に、コミュニケーションを細かくとるようにしたりしています。だって、彼女がいなければ、今の楽しい生活は無かったのですからね。でも、小言が多くなってしまうのは、私もまだ修行が足りないからでしょうか。

タダシさん、これからもお幸せに。

コメントNo.7|2007年08月24日 23:51

素敵な遺書に感動しました。
家族ってなかなか素直になれず小言をいっちゃいますよね。
私もそうです。
私は2年前、主人と離婚したいと思ったことがありました。
いろいろあって・・・でも今は仲良しですが
私は主人と結婚するときに子供が授かるのは難しいと言われた体でした。でも、主人は子供ができなくても二人でもきっと幸せになれるよって言ってくれました。
幸い、二人の子供を授かり今は本当に幸せです。
主人には感謝でいっぱいです。そして、私の子供として生まれてきてくれた子供たちに感謝です。
私もいつか主人と子供たちに遺書を書きたいと思いました。

タダシさんそんな気持ちにさせてくださってありがとうございました。

コメントNo.8|2007年09月01日 11:45

主人や子供に対する私の思いと重なり、涙、涙、です。

私も、結婚して15年!タダシさんと同じ中2の娘がいます。

娘が小学校3~4年生頃までは、誕生日に手紙を書いて渡していました。
子供が大きくなるにつれ恥ずかしさや、照れもあり手紙を書いていませんでした。
娘は、今月14歳の誕生日を迎えます。
手紙を書いてみようと思います。

今は、今しかないのだから!
今の気持ちを・・大切に・・・

子供には、子供の人生がある
親の思いで縛ってはいけない事!

自分の思いは、言葉で伝える事!

あとは・・・実行あるのみデス!!

いろんな気付きをありがとうございました。

コメントNo.9|2007年09月11日 17:52

『遺書』と言うのには、正直(演技でもないな)と思いました。でも、タダシさんの素直で素敵な言葉や想いに感動し涙がとまりませんでした。

私には供が5人おります。成人した息子、高校生の息子、中学生の息子に小学生の息子と娘。

それはもう毎日が慌しく、勤めている私には気持ちに余裕も無く、日々の小言はだんだんエスカレートする一方(現在も・・・)です。

でも、これ以上はもうムリだ・・・と心が叫ぼうとする時に決まって来るのがココです。

多くの方の励ましは私に向けているのだ。
野口さんの温かな言葉は今の私に必要なんだ。
そう感じ取って(勝手にですが(^^ゞ )・・・


タダシさんのように、私も『遺書』と言うものに、書き記してみようか・・・でも、なかなか素直になれない私に出来るだろうか?と自問自答中。

まずは・・・
愛してやまない子供達や主人に、『ありがとう』と素直に感謝の言葉を言う事
叱る事と怒る事の違いを自分自身で見極める事
遠かれ近かれ、いずれは本当の自分の気持ちを伝えなきゃいけなくなった時に、後悔しないように素直な気持ちを持つ事

私に今出来ること、やってみたいと思います。

ありがとうございました。




コメントNo.10|2007年09月28日 13:17

私も遺書を書いてみようと思います。
親の気持ちをわかってくれない中3の息子・・・。次々に事件を起こしてくる息子。私が あの子の気持ちをわかっていないのかもしれませんね。
とてもとてもはずかしくって言えない言葉。
遺書だと思えば本心を素直に書ける気がします。
わかってもらなくてもいいから、伝えようと思います。

コメントNo.11|2007年10月15日 14:18

心から「ありがとうございます」と申し上げたい気持ちです。
私は、妻、娘の3人家族です。

この「遺書」を拝読しながら私も過去にある方から教わった言葉を思い出していました。

それは、「素直で正直で、嘘をつかないで見栄を張らないで、約束守って、迷惑かけない」という言葉です。

簡単そうでなかなか出来ないことばかりですが、これが少しずつでも出来るようになれば幸せな人生が送れるぞと、
当時、この言葉を教わったときにはマイブームになっており、心がけもしておりましたが、いつしか仕事にかこつけて言い訳することに追われ、妻を責め、娘にあたり、家族の笑顔を奪ってきていることに、この「遺書」を読ませていただき気づかせて頂きました。

素直に正直に見栄を張らないで自分の気持ちを伝えようと思っています。

コメントNo.12|2008年02月27日 11:01

タダシさんのお手紙を読ませていただいて、自分の父の気持ちが分かった気がします。私は頭では父の忙しさ、大変さを理解していたつもりでしたが、本当の気持ちまではわかっていなくて、一方的に「親なのに、子供を傷つけるなんて。私が親になったら絶対に子供を傷つけない。」って思ってました。でも、親だって一人の人間だし、家族とのかかわりの中で皆でぶつかり合って色んな事を経験していくものなんですよね。いつか私が新しい家族を作ったときに、夫や子供たちとのかかわりの中で今日感じたことを思い出していけたらと思います。ありがとうございます。

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